マイティ井上のサンセット・フリップ

2003.11.30 upload
2024.11.23 remix

 

これがマイティ井上のサンセット・フリップだ!*

 

 最近日増しに国際プロレスへの郷愁の念にも誓い思いが自分の胸にフツフツと湧き上がってくるのを感じる。そのたび私は国際プロレスのビデオを再生するのである。画面に映し出されるのはパンチパーマのラッシャー木村、長髪のアニマル浜口、そしてサイケデリックなタイツのマイティ井上である。

 井上というレスラーは国際プロレスの中にあって、独特の雰囲気を持つレスラーであった。ドロップキック、フライングヘッドバット、サンセットフリップなど、空中殺法を得意としていたのだが、それらはいずれもユーモラスといおうか、独特の「井上テイスト」がプンプン漂っていた。中でも彼の使うサンセット・フリップ(サマーソルト・ドロップ)にはなんともいえぬ魅力があり、それを支持する少年ファンも多かったのである。

 当時この技を使う日本人はタイガーマスクが登場するまで井上一人だったと記憶する。ということはこのワザは井上の専売特許的技だと他のレスラーも認めていたということだろう。このワザはダウンした相手めがけて宙返りして背中から落ちるというワザである。

 井上のサンセット・フリップには独特のテイストがあった。というのは回転する前に一種のダンス(?)のような独特の動作と「あ〜あ〜あ〜」といったような奇妙な掛け声を発したのである。これが少年のハートをがっちり掴んだのである。あの独特の動きはマネようとしてもマネのできるものではなかった。井上があの不思議な動きをみせ、掛け声を発すると、ファンは「来た来た、サンセットフリップ!」と胸躍らせたのである。ワザに入るまでの動き・・・これもファンを魅了するプロの技なのである。

 

     
 大きく手を振り上げて   手を振り下げる勢いを生かし…    ジャンプ一番前方に宙返り    背中から相手に落下! 

 

 このワザの元祖はエドワード・カーペンティアだと言われている。昭和45年の初来日の際に公開しているが、やはり体操選手出身だけあって、運動力学と実践するような(?)腕のふりを見せている。意外と重量感があるのに驚く。

 本家のカーペンティアに先駆けてこのワザを公開したのが、昭和44年に初来日したメキシコのブラック・ゴールドマンであった。彼が使うこの技はバックワードダイブとよばれた。後に名脇役として評価されるゴールドマンはこのシリーズでは大木金太郎のアジア選手権やデストロイヤーとのコンビでインター・タッグ選手権に挑戦するという大活躍。やはりこのワザのインパクトがフロントやファンにアピールしたのであろうか?

 ロスで一時代を築いた「黒い核弾頭」ビクター・リベラもこの技を得意としており、フィニッシュに使っていた。

 意外なところでは、ドン・レオ・ジョナサンがこのワザを得意とした。初来日時に披露したかは不明だが、昭和45年の来日時に披露しているのは確認できている。ジョナサンのサンセットフリップといえば、「オープン選手権」、「第6回チャンピオン・カーニバル」でのブッチャーとの試合でこの技を自爆した後、エルボードロップでフォールされたシーンを思い出してしまう。

 一番の圧巻はだるまのようなオットー・ワンツのスチーム・ローラーとよばれたサンセットフリップ。不恰好だがこれは意外性もありインパクトがあった。ヘビー級のレスラーが使ってこそ迫力のあるわざとえよう。

 チャボ・ゲレロも昭和53年に新日本プロレスに初参加したシリーズでは、ロープのリバウンドを利用して走り込んで勢いをつけて回転するサンセットフリップをフィニッシュにしていた。タッグマッチではパートナーが羽交い絞めで仰向けに捕まえた相手にコーナー最上段からのダイビング・サンセットフリップを披露していた。

 

     
 カーペンティアのサンセットフリップ   ゴールドマンのサンセットフリップ。回転時の高さも充分。

 

     
 リベラのサンセットフリップも軽快で高さがある   ドン・レオ・ジョナサンは自爆することが多いイメージ   オットー・ワンツはあまり飛び上がらず前転するような感じ

 

         
 チャボ・ゲレロのコーナー最上段からのダイビング・サンセットフリップ! 

 

類似技研究「サンセット・フリップほか」もご覧ください