バディ・キラー・オースチンのドリル・ア・ホール・パイルドライバー

2001.7.6 update
2002.10.1remixed

 

  プロレス史上、凄惨なアクシデントは数多いが、実際にリング上でレスラーが即死したというのは数が少ない。オックス・ベイカーのハートキックでなくなったアルバート・トーレスは控え室に戻ってから急死した。技を食ってその場で即死したのはわずか2例。しかも加害者は2回ともバディ”ザ・キラー”オースティンであった。そしてアル・スミス、ジョージ・サイモンを死に追いやった技が脳天くい打ち=パイルドライバーであった。オースチンはその後、愛娘をプールで溺死させ、「これはあのふたりの呪いだ!」と真剣に悩むようになり、酒に溺れ選手生命はもちろん、寿命まで縮めたのであった。

基本的にこの技は受け身が取れない。なぜなら脳天からマットに叩き付けられるからだ。とくにオースティン・スタイルのタイツつかみ式は全体重が脳天にかかってしまう。更に注目したいのは、オースティンが相手の頭を膝で挟んでいる点。多くのレスラーが太股の部分で相手の頭を挟むが、これでは太股の圧みで確実に脳天をマットに叩き付けることは出来ない。しかし膝なら確実に脳天を打ちつけることが可能。さらに自分の体をL字型にせずに伸びた状態で後方に手折れ込んでいる。通常のパイルドライバー(以下ホールド式)は相手の動体をしっかりホールドして、一度伸び上がって自分の体を相手の身体に密着させ尻餅を付くような形で倒れるのだが、一度伸び上がるときに頭がすっぽ抜けることが非常に多い。しかしオースティン式はすっぽ抜けの心配がないのだ。非常に計算され尽くしたスタイルだといえる。この技は60〜80年代に渡って、多くの州で使用禁止となった。オースチン式のパイル・ドライバーはカナダのドクター・デス(ムース・モロウスキー)が見事に継承している

 

     
             

バランスの良いオースティン式を
見せるドクター・デス

 

こちらはボブ・スウィータン。
対戦相手は高田伸彦

  ジャンプ式の使い手 バックランド   ロジャース式は太股を抱え込む。
ドス・カラスVSアストロ・レイ

 

さて、一般に使われるホールド式のパイル・ドライバーは相手をホールドする位置により、衝撃を調整できるので、アクシデントは少なくなる。この技は使い手が多いが、アメリカではミスター・パイルドライバーと呼ばれたという、ボブ・スウィータンのパイルドライバーが一番フォームも美しく力強いといわれている。上の写真はUWF旗揚げシリーズに来日時のもので、高田伸彦をKOしたときのもの。このホールド式の発展形として登場したのがジャンピング式で、日本では木村健吾も得意としたが、何と言ってもバックランドのジャンピング式はズシーンという重量感があった。他にはラッシャー木村、意外なところではファンクスがこの技を多用している。

もうひとつの変形バリエーションは太股をホールドすることにより頭のすっぽ抜けを防ぐ効果があるようだが、見た目はあまり良くない。

残念ながらツームストン式以外のパイル・ドライバーは、パワーボムの定着とともにマイナーな使い手の少ない技になっているのが現状。これほど凄惨なサイドストーリーがあるのだから、この技一本で勝負するレスラーがそろそろ出てきても平成のファンには新鮮であろう。

 

注)ミラノ式ジャンピング・パイルドライバーツームストン・パイルドライバーは独立しました。