シエン・カラスのメキシカン・ストレッチ

2002.10.23update

 

来日第一戦ではインパクトを残したが・・・。

 

 来日第1戦では強かったのに、その後がさっぱりと言うレスラーは多い。初期の新日本プロレスは第二のマスカラスを発掘しようと、未来日のメキシカンを多く招聘した。その第二のマスカラス発掘路線で51年に来日したのがシエン・カラスであった。彼の来日第一戦の対戦相手はメキシカンはお任せの星野勘太郎だった。その試合で見せたのが強烈なメキシカンストレッチだった。しかしシエン・カラスはその後化けの皮がはがれたと言おうか、戦績はぱっとせず、第二のマスカラスにはなれなかったのである。

 ところで「プロレス技のネーミングは非常に適当だ」というのは、必殺技研究を通じてよくわかった。とくに酷い(?)のが、メキシコ系レスラーが使う技は全部「メキシカン・〜」で片付けているということ。メキシカンはコブラツイストの変形のような技をよく使った。おそらくメキシコではそれぞれ違った名前で呼ばれていたであろうが、日本では百派一絡げにしてメキシカン・ストレッチを名づけてしまったのである。続いて日本で公開されたものを中心に「メキシカン・ストレッチ」を紹介してみようと思う。シエン・カラスが見せたメキシカンストレッチは卍固め風に脚をフックし、左腕を自分の右足で固定し、相手の右腕をねじり上げるという強烈なもの。ここでは便宜上タイプAと呼ぶ。このタイプはあまり日本では公開されていないようだが、メキシコではポピュラー。写真は未来日に終わったセサール・バレンチノと怪奇派レスラーとして日本で紹介されたこともあるエル・レオン・ネグロ。猪木が見せた新卍固めはこのタイプAをアレンジしたもの。

 

タイプA

 
セサール・バレンチノ   エル・レオン・ネグロ

 

タイプB

     
ミル・マスカラス   カネック   ジャイアント馬場   グレート小鹿

 

 もっともポピュラーと思われるメキシカンストレッチは、相手をリバースフルネルソンに捕らえて相手の脚を裏側からフックし、状態をひねるもの。ここでは便宜上タイプBとよぶ。このタイプはおもに首と両腕を重点的に責めるものと思われる。このタイプのポイントはいかに相手の腰を落とさせるかにある。腰を落とすことにより相手は膝を曲げなくてはならない。膝が曲がることにより、脚のロックが完璧になり、脱出される事を防げるのである。馬場、小鹿のように相手の足が伸びていると、身体をひねって脱出されやすいのである。上の写真の中では、腕のロックの位置、腰の落とし方などの点で、マスカラスのがもっとも強烈に思える。これでマスカラスが上体をそらせば、首と腕が完全に決まるのではないか?カネックのは脚のロックは完璧だが、首と腕の決め方がマスカラスに比べて弱いように思う。馬場のメキシカンストレッチはまさに秘密兵器。馬場もこの技を気に入ったのか、この写真をパンフレットの表紙に使っている。小鹿はマスカラスとの一連の抗争でこの技を嫌と言うほどくらって体得したのであろう。しかし完全にマスターしているとは言いがたい。

 

タイプC

   
ロボットC-3   エル・グラン・マルコス   カネックVS藤波

 

タイプD

 
カネック   フィッシュマン

 

 タイプCはタイプAとBをミックスさせたようなもので、左腕を巧く脚で固定しないことには簡単に脱出出来るように思えるが、どうなのだろうか?日本ではロボットC-3が公開している。カネックと藤波の写真は、藤波がメキシコ修行時代のもの。このショットを見るとかなりの拷問技のように思えるベストショットだ。

 タイプDは大木金太郎が使っていたX固めに似たタイプのもの。カネックとフィッシュマンの画像を紹介するが、よく見れば両者のストレッチは微妙に違う。まずカネックのストレッチだが、藤波の左腕をご注目いただきたい。左足に巻きつけられ、さらにカネックの脚で固定されている。どうやってこの体勢になるのか想像も出来ない。フィッシュマンは写真では見えにくいが相手の左腕を自分の両足で挟んでいるようだ。右腕で相手をロックし、開いた左手であごをつかんで首も痛めつけようとしているのがわかる。

 以上、大まかに4タイプのメキシカン・ストレッチを紹介したが、これはほんのごく一部で、メキシコには摩訶不思議な複合技が数多い。いずれ特別バージョンとしてメキシコの複合技特集をお届けしたいと思いますので、どうぞお楽しみに。