カール・ゴッチのジャパニーズ・レッグロール・クラッチ(回転足折り固め)

2024.11.10 upload

 

カール・ゴッチが新日本プロレスの旗揚げシリーズで披露したジャパニーズ・レッグロール・クラッチ

 

この「昭和必殺技名鑑」は2000〜2003年に作成したこともあり、当時は「昭和プロレス研究室」も資料に乏しく、的外れな研究もあった。今回のリミックスで各技の解説を読み返すとお恥ずかしい内容もある。

その最たるものが、類似技研究4「回転足折り固めと後方回転エビ固め」である。この後、雑誌資料の充実、動画が入手しやすくなり、情報量がぐっと増えた。類似技研究では、カール・ゴッチの回転足折り固めはビル・ロビンソンの半回転エビ固めでフォールされたゴッチがコピーしたのではないかという、いま思えがトンチンカンな当時の協力者の推論も公表していた。

今回は先に結論を書くが
・回転足折り固めと半回転エビ固めは同じ技
・ゴッチがロビンソンにこの技でフォールされる以前に日本で先に公開していた
よって「ゴッチがロビンソンから盗んだ」という前出の推理はトンデモな推理だったということになる。

この技はカール・ゴッチが日本で初公開した技であることは間違いない。それは「類似技研究4」で

「プロレス&ボクシング」昭和43年6月号のイラストエッセイ「平嘉門のワールド・アラカルト」の中に、この技のイラストがあった。「第10回ワールド大リーグ戦」に特別出場していたカール・ゴッチ(当時はコーチとして日本に滞在)のテクニシャン振りが紹介されているが、その中に明らかにジャパニーズ・レッグ・ロールと思われるカットがある。ゴッチは遅くとも昭和43年4〜5月には、この技を日本で披露していたのである。昭和43年4月にはロビンソンの初来日と時を同じくしている。

と追加情報で書いたとおりである。2度目の来日時(昭和41年日本プロレス「サマー・シリーズ」)に公開していたという(流智美氏の証言も得られた。

さらに後方回転エビ固め(ブリッジ・バージョン)と回転足折り固めは決まった時の形がほとんど同じなので、混同されがちだが、相手の丸め込み方が全く違う。昭和44年当時にビル・ロビンソンの連続写真を紹介する。

 

   
 相手の両脇に足を入れてはさみ・・・   横に半回転して仰向けにさせる     そして自分は立ち上がり
 
ブリッジして相手を固める   つま先が相手の型の位置にあるのに注目

 

昭和50年6月のNWF奪回戦でシンを丸め込んだ猪木の回転足折り固め


連続写真を見ればお分かりの通り、この技が「半回転エビ固め」と呼ばれたのもよくわかる(この写真のキャプションも「半回転エビ固め」となっている)。

またロビンソンはダブルー・アームバーにとらえた相手が逃げようと足を上げたところを、自分の足で相手の足をフックして固めるというエビ固めも多用した。

同じ「蛇の穴」出身のゴッチとロビンソンが使っていたということは、この技はヨーロッパではポピュラーなフォール技だったのであろう。

日本人レスラーではアントニオ猪木が受け継ぎ、さらに藤波辰巳に引き継いだ。猪木が師匠のゴッチに決めたジャパニーズ・レッグロール・クラッチの連続写真をご覧いただこう。

 

   
 相手のバックに周り…   テイクダウン     相手の枠の下に足を差し込んではさみ
         
 横に半回転して相手を上向けにさせ   体勢を立て直して    ブリッジで固める 


ロビンソンはグラウンドからこの技に入っていたようだが、猪木は相手をうつぶせに寝かせたところに足で身体を挟み横に半回転するというスタイルであった。この入り方は藤波辰巳も受け継いでいる。藤波の場合は相手をロープに振って戻ってきたところをレッグシザースでうつぶせにダウンさせて、この技を決めていた。

この技は今でもジャパニーズ・レッグロール・クラッチの名称でつかわれ続けているようである。