TWWA認定世界タッグ選手権 パート 1 (43年)

 

タイトルのあらまし

TWWAが認定した世界タッグ選手権はシングルタイトルとは違い、日本に定着し、初期国際プロレスの看板タイトルとなった。しかしTWWAという名称が色褪せ始めた頃、IWA世界タッグ選手権が登場し、しばらくして封印されることとなる。このタイトルは驚くべきことに43年1年間で22回ものタイトル・マッチが行われている。なかにはタイトルマッチの2日前に急遽組まれたものもあり、もしかしたらマスコミに未発表で行われたものもある可能性は高い。こういうタイトルマッチ乱発はタイトルの権威を降下させることがあるのも承知の上で行なった裏にはやはり目を被うばかりの悲惨な観客動員のてこ入れということがあったに違いない。

 

歴代王者

1.アル・コステロ&ドン・ケント
2.豊登&サンダー杉山

(44年4月にスタン・スタージャック、タンク・モーガン組相手に反則負けで防衛するが判定を不服として豊登が王座返上)
3.サンダー杉山&ラッシャー木村
(王座決定戦でS・スタージャック、T・モーガン組を破る。5度の防衛を経てタイトルは消滅)

   

 

国内タイトル戦一覧 (左が選手権保持者)
 
43年1月31日 横浜文化体育館 60分3本勝負 ワールド・タッグ・シリーズ
○ アル・コステロ&ドン・ケント (2−0) グレート草津&サンダー杉山 ●
コステロ(エビ固め 9分50秒)杉山
ケント(体固め 9分47秒)草津

なにがなんでもタイトルが欲しいTBSは草津と杉山という彼らにとって最も優れた「タレント」にコンビを組ませ、タッグの名手ザ・カンガルーズに挑戦させた。しかし結果はテーズとの闘いと同じく、SKコンビは手も足も出ずカンガルーズにひねられたのである。

 
 
43年1月10日 大阪府立体育会館 61分3本勝負 ワールド・タッグ・シリーズ
● アル・コステロ&ドン・ケント (1−2) 豊登&サンダー杉山 ○
豊登(ベアハッグ 8分41秒)ケント
コステロ(豪州式原爆固め 6分48秒)杉山
杉山(エビ固め 7分32秒)コステロ

SKコンビの惨敗でTBSはここでもオープニング・シリーズ前には「エースとしては使わない!」と断言していた豊登に出馬を乞う。豊登はさすが日本プロでエースを張った意地を見せ、遂に王座獲得。TBSプロレスに初のタイトルをもたらした。

 
43年3月6日 茨城県営スポーツセンター 61分3本勝負 日欧決戦シリーズ
△ 豊登&サンダー杉山 (1−1) トニー・チャールス&リー・シャロン△
杉山(体固め 14分50秒)チャールス
チャールス(体固め 6分50秒)杉山
(両軍リングアウト 2分40秒)

TBSが経営から退陣、吉原氏が代表に返り咲いて開催された日欧決戦シリーズはグレート東郷との絶縁で、外人招聘ルートを英国のジョイント・プロにもとめての初のシリーズでもあった。シリーズ唯一のタイトルマッチがチャールス、シャロン組を迎えてのこの試合。英国組はミッド・ヘビー級の体格ゆえ日本組の楽勝と思われたが、英国組の粘りにあい引き分け防衛でお茶を濁した。

 
43年4月17日 唐津市体育館 61分3本勝負 日欧チャンピオン決戦シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−1) トニー・チャールス&ジョン・リーズ●
(両軍リングアウト 14分20秒)
豊登(背骨折り 3分50秒)チャールス

前シリーズより残留したトニー・チャールスがジョン・リーズにパートナーを変えて挑戦した日本陣営にとって2度目の防衛戦は順当に(?)日本陣営が勝ちを収め、ようやくすっきりした形で防衛を果たした。

 
43年4月24日 熊谷市民体育館 61分3本勝負 日欧チャンピオン決戦シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−0) ビル・ロビンソン&トニー・チャールス●
日本組(反則勝ち 10分1秒)英国組
杉山(体固め 2分40秒)チャールス

シリーズ2度目のタッグ選手権試合はロビンソン、チャールスという最強外人コンビを迎えての防衛戦であったが、ここに来てようやく豊登、杉山のコンビネーションが確立されたか?意外にもストレート勝ちで日本組が防衛を果たした。ロビンソンの反則負けは珍しい。

   
43年 5月8日 船橋へルスセンター内ローラースケート場 61分3本勝負 日欧チャンピオン決戦シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−1) ビル・ロビンソン&ジョン・リーズ●
杉山(体固め 17分57秒)リーズ
(両軍リングアウト 9分)

欧州最強のプライドにかけてロビンソンがパートナーをリーズにかえて挑んだこの試合も、1本取られた後、両軍リングアウトで敗退。この一戦で仲間割れを起こしたか、ロビンソンとリーズは3日後に欧州ヘビー級選手権をかけて戦っている。

 
   
43年 5月26日 札幌 中島スポーツセンター 60分3本勝負 ワールド選抜シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−1) ジョン・コックス& エンリケ・エド ●
コックス(体固め 11分51秒)杉山
豊登(背骨折り 1分25秒) エド
杉山(体固め 4分37秒)エド

シリーズの準エース(エースはアルバート・ウォール)である「原爆ヘッド」ジョン・コックスがパートナーにエンリケ・エド(後にモンスター・ロシモフを発掘)を指名して挑んだ選手権試合はなかなかの名勝負となったようだが、日本組の牙城は崩せず。

 
   
43年 6月22日 新潟県体育館 61分3本勝負 ビッグ・サマー・シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−0) ジ・アウトロー&スカイ・ハイ・リー ●
日本組(反則勝ち 18分30秒)外人組
杉山(体固め 3分40秒)リー

前回で防衛記録を5にし、ますます好調のTSコンビに挑んだのは、当時イギリスで暴れていたゴードン・ネルソンが正体のジ・アウトローと、往年の怪奇派でこれまた当時欧州を主戦場としていたスカイ・ハイ・リーであったが、スカイ・ハイ・リーはアルコール中毒の末期患者のようであり、実力派のアウトローの足を引っ張る結果となり、ストレート負け。TSコンビはストレート防衛が非常に多いチームであった。

 
   
43年 7月 13日 横浜スカイホール 61分3本勝負 ビッグ・サマー・シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−1) ジ・アウトロー& ブル・デービス ●
豊登(逆片エビ固め 11分10秒)デービス
アウトロー(片エビ固め 6分50秒)豊登
豊登(体固め 1分5秒)アウトロー

完全なロートルになっていたリーから脂の乗りきった盛りのデービスにパートナーを変え挑んだアウトローの再挑戦は、今回は1本は取ったものの見事に返り討ちに遭った。

 
   
43年 7月27日 大阪府立体育会館 61分3本勝負 ビッグ・サマー・シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−1) ジ・アウトロー& イアン・キャンベル ●
キャンベル(逆さ押え込み 17分15秒)杉山
杉山(体固め 5分55秒)キャンベル
日本組(反則勝ち 7分15秒)外人組
 
   
43年 7月30日 東京都体育館 61分3本勝負 ビッグ・サマー・シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−1) ジ・アウトロー& イアン・キャンベル ●
アウトロー(回転エビ固め 14分20秒)杉山
杉山(片エビ固め 2分50秒)アウトロー
豊登(アバラ攻め 4分30秒)キャンベル

前回の反則負けを不服としたアウトロー、キャンベル組は3日後の東京大会で再挑戦。しかし今回は文句なく完敗。TSコンビの強さは本物になってきた。日本のプロレス史上で同じレスラーが1シリーズで同じタイトルに4回挑戦したのは、このアウトローとあと一人だけである。

 
   
43年 8月6日 葛飾区体育館 61分3本勝負 ワールド・サマー・シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−1) プリンス・クマリ& ブル・デービス ●
クマリ(体固め 13分12秒)杉山
杉山(体固め 8分11秒)デービス
豊登(逆エビ固め 2分16秒)デービス

前シリーズより残留の英国南部ヘビー級選手権者ブル・デービスが黒い獅子王プリンス・クマリをパートナーに挑戦したこの試合も、TSコンビは強く10連続防衛へあと1と迫った。

 
   
43年 8月16日 大分県体育館 61分3本勝負 ワールド・サマー・シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−1) プリンス・クマリ& イアン・キャンベル ●
キャンベル(体固め 3分45秒)杉山
杉山(体固め 5分36秒)キャンベル
日本組(反則勝ち 5分12秒)外人組

7月から1週間に1回というハイペースで防衛を重ねついに連続防衛記録10回を達成。前シリーズではジ・アウトローを軸に外人組が挑戦したが、今回はプリンス・クマリが4回連続挑戦している。

 
   
43年 8月18日 宮崎県営体育館 61分3本勝負 ワールド・サマー・シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−1) プリンス・クマリ& イアン・キャンベル ●
豊登(アバラ折り 9分40秒)キャンベル
クマリ(逆エビ固め 6分56秒)杉山
豊登(逆エビ固め 3分36秒)クマリ
 
   
43年 8月24日 福岡市九電記念体育館 61分3本勝負 ワールド・サマー・シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−0) プリンス・クマリ& ワイルド・アンガス ●
杉山(13分34秒 体固め)アンガス
豊登(5分50秒 逆片エビ固め)クマリ
   
43年 10月1日 町田市体育館 61分3本勝負 ダイナマイト・シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−1) アル・ヘイズ& リッキー・ハンター ●
豊登(逆片エビ固め 13分8秒)ヘイズ
ハンター(体固め 3分52秒)杉山
杉山(片エビ固め 3分30秒)ハンター
 
   
43年 10月9日 鹿沼市御殿山球場 61分3本勝負 ダイナマイト・シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−0) ジム・ハジー& リッキー・ハンター ●
杉山(反則勝ち 16分43秒)外人組
杉山(体固め 2分30秒)ハジー
 
   
43年 10月15日 下館市青果市場前広場 61分3本勝負 ダイナマイト・シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−1) ジム・ハジー& ジョージ・ゴーディエンコ ●
豊登(アバラ折り 24分32秒)ハジー
ゴーディエンコ(体固め 2分41秒)杉山
杉山(片エビ固め 4分15秒)ハジー

このシリーズのエースは開幕前は初代ブラック・タイガー=ローラーボール・マーク・ロッコの父であるジム・ハジーであったが完全な期待外れ、ここでも2本取られている。変わってエースを張ったのがゴーディエンコであった。ゴーディエンコはレイ・ハンターとともに次のワールド・チャンピオン・シリーズにも残留。

 
   
43年 11月22日 名古屋市金山体育館 61分3本勝負 ワールド・チャンピオン・シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−1) ジョージ・ゴーディエンコ& レイ・ゴールデン・アポロン ●
豊登(逆片エビ固め 10分35秒)アポロン
ゴーディエンコ(体固め 7分43秒)杉山
杉山(体固め 1分3秒)ゴーディエンコ
 
   
43年 11月30日 東京蔵前国技館 61分3本勝負 ワールド・チャンピオン・シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−1) ジョージ・ゴーディエンコ & ジョン・ダ・シルバ ●
ゴーディエンコ(体固め 7分20秒)杉山
杉山(体固め 1分20秒)ゴーディエンコ
豊登(逆片エビ固め 9分45秒)シルバ
 
   
43年 12月10日 呉市体育館 61分3本勝負 ワールド・チャンピオン・シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−0)ジョン・ダ・シルバ& レイ・ゴールデン・アポロン ●
豊登(逆片エビ固め 10分35秒)アポロン
杉山(体固め 6分54秒)シルバ
 
   
43年 12月21日 大阪府立体育会館 61分3本勝負 ワールド・チャンピオン・シリーズ
○ 豊登&サンダー杉山 (2−1) ジョージ・ゴーディエンコ& ピーター・メイビア ●
メイビア(体固め 20分12秒)杉山
日本組(反則勝ち 5分13秒)外人組
杉山(体固め 3分15秒)メイビア
 
   
   

パート2へつづく