金髪の狼 ニック・ボックウィンクル

1938年 ミズーリ州セントルイス出身
身長188センチ、体重120キロ
得意技 : 四の字固め、スープレックス
主なタイトル : AWA世界ヘビー級、AWA世界タッグ、太平洋岸ヘビー級

 

ニック・ボックウィンクルの名を聞いてまず思い浮かぶ言葉は「ダーティー・チャンプ」だろう。実際AWA世界王者と
して何度も来日しているが、特にタイトルマッチにおけるニックのファイトぶりは、あまり褒められたものではなかっ
た。ピンチに陥るとレフリーを殴っての反則負けで逃げるというのがお決まりのパターンだった。しかしある試合を
境にそのようなニックのファイトぶりは「ダーティー・チャンプ」にギミックを全うするためのものだという事に気付い
たのである。その試合とは武道館でジャンボ鶴田に挑戦したAWA世界戦である。この日のニックは白いトランクス
で登場。試合の方も終始正攻法のレスリングで鶴田を苦しめたのである。筆者がこの時までニックのもつテクニッ
クの素晴らしさに気付かなかった事は迂闊だったという以外に言葉がない。余りのニックの精力的な攻めに鶴田
が持ちこたえられなくなり、苦し紛れに本部席にあったチャンピオン・ベルトでニックの頭を殴り付けての反則負
け。見事に立場が入れ替わってしまった訳である。この時武道館にこだましたニック・コールを筆者は今でも忘れ
ない。

彼の初来日は古く1964年の日本プロレス サマー・シリーズにまで溯る。この時は中堅の扱いでの来日だった
が、エース格のマグニフィセント・モーリスを食って、エースとして活躍したそうだ。2度目の来日は昭和ファンならご
存知の第1回NWAタッグ・リーグ戦。ビッグ・ジョン・クインとのコンビで決勝まで進み、猪木、星野組との熱戦は今
でも語り種となっている。このころのニックはNWA世界チャンピオン候補にひとりで、バリバリのストロング派だった
と聞く、何しろ16歳でデビュー、その相手がルー・テーズだったというのだから凄い。ショーマン派だというイメージ
が強いが、実際は根っからのストロング派で、その下地があってこそのダーティー・チャンプのギミックを全うでき
た訳だ。プロレスの奥の深さを体現したレスラーの一人であったと思う。