ルー・テーズのバック・ドロップ

2002.1.26 update

 

 
     
力道山との世界戦で見せたバックドロップ   こちらは馬場とのインター戦での一発

 

 掲示板への書き込みでこのコーナーへのヒントを得ることは誠におおい。そんな中、ヒミ人さんのこのような書き込みがあった「ルーテーズのバックドロップというのは力道山に掛けた「持ち上げしゃがみ落とし」方式とアメリカの雑誌などの写真に載ってる「きれいにブリッジ鶴田に直伝」方式(ここではブリッジ投げきり方式と呼びたい)のどちらの方が本物なんでしょうか?」確かにテーズのバックドロップには二つの方式がある。というのも48年の世界最強タッグ戦で猪木、坂口にそれぞれお見舞いしたバックドロップのスタイルは異なったものであったからだ。

 上の写真をご覧いただきたい。左側がいわゆる「しゃがみ落とし方式」で、右側が「ブリッジ投げきり方式」である。写真で見る限り、左のしゃがみ方式の方が角度急である。ビデオで見る限りでもスピードが凄い。見た目には危険な投げ方といえると思う。一方の馬場に見舞ったブリッジ投げきり方式はひざを崩すことなくそのまま後方に投げきっている。鶴田の前には猪木がこのブリッジ投げきり方式を多用していた。この方式は後方に力が加わるために、投げきった後の相手の体がくの字になる。草津をKOしたのがこの方式で、見た目にはこの投げ方のほうがゆったりとしているように見えるが、投げ技という点ではこちらのほうがいささか強烈なダメージがあるのかもしれない。ロスでアントニオ・ロッカの肩を(故意に)負傷させた時の投げ方は相手の体が最も高くなった時点で、右方向に投げ捨てつつ腰を落とすような感じだったらしい。ではそれぞれのスタイルの連続写真があるのでご覧いただこう。

 

 

     
             
相手をうまく臍に乗せ  

相手の重心が後方に移る
と同時に

  ひざを折り曲げる。   この方式はスピードが命

 

     
             
これも相手を臍に乗せる   ひざは伸ばしたまま   そのまま後方に反り返り   やや右にひねりを加える

 

 

 
     
ガニアの抱え式  

ヘソ投げの継承者ジャンボ鶴田

 

しゃがみ方式にしろ、ブリッジ方式にしろテーズのバックドロップの基本は相手をヘソに乗せてなげる・・・いわゆるヘソ投げ式にある。これを見事に継承したのがアントニオ猪木でありジャンボ鶴田であった。しかし両者ともテーズのアドバイスを受けるまでは、相手のまたに手を差し込んだ抱え式であったということを付け加えておく。

さて抱え式といえばAWAの帝王バーン・ガニアやドリー・ファンク・ジュニアが多用したスタイル。相手を高く抱え上げたからやや横投げ気味に倒れこむもので、上半身をそらせるブリッジの要素はほとんどない。ジン・キニスキーがジャイアント馬場からインター選手権をもぎ取った時のフィニッシュもこのスタイルであった。しかし、テーズのヘソ投げ式と比べると、そのインパクトは比べ物にならぬほど劣る。

ほかには長州、マサ斎藤のひねり式があるがこれはヘソ投げ式の系統に属するといえよう。最近では後藤がこの技一本で押し捲っていた時期があったが、最近はやや低迷気味。バックドロップ一本で勝負できる選手の登場に期待したい。