ミル・マスカラスのサーフボード・ストレッチ

2024.12.11 upload

 

 

ミル・マスカラスはほぼすべての試合で痛め技として使った

 

 相手の背後から両腕をとり、自分の足、もしくは膝を相手の背骨にあてがいぐいぐいと腕と背骨を攻める複合技。足や膝を相手の背骨にあてがわず、単に相手の両腕を背後からねじり上げるだけの技もサーフボード・ストレッチと呼ばれた。サーフィンボードに乗っているように見えるから、サーフボード・ストレッチ(波乗り固め)なる技名が付けられた。

 この技を日本で初公開したのは昭和32年に来日したロード・レイトンであると流智美氏の著書「これで分かった!プロレス技・上」に書かれているが、昭和30年10月に発行された河出新書の「プロ・レスリング」に「両腕逆とり」という名前で遠藤幸吉がユセフ・トルコにサーフボード・ストレッチをきめている写真が紹介されている。これは練習でのショットなので実戦で遠藤が使っていたかどうかは不明。昭和34年に来日したエンリケ・トーレスもよく使っていたそうだから、日本ではプロレスの創成期から知られた技と言える。

 やはりこの技の使い手と言えばミル・マスカラスが思い浮かぶ。オーソドックスなサーフボード・ストレッチをほとんどの試合で痛め技として披露。この技をかけている時のマスカラスの上半身の筋肉美は見応えがあった。昭和52年度の年間最高試合に選ばれた田園コロシアムでのUNヘビー級タイトル・マッチでは、チャンピオンの鶴田をグラウンドの状態で相手の頭に足をかけて締め上げる変型のサーフボード・ストレッチでギブアップさせている。

 

   
昭和30年発行された河出新書に掲載された「両腕逆とり」    リーチのながい馬場のサーフボード・ストレッチは強烈!    ストロング小林も得意とした

 

 アンドレの腕をねじり上げるだけのサーフボード・ストレッチ    メキシカンはこの技を得意としていた。エル・ソリタリオの波乗り固め

 

 日本人ではなんといってもジャイアント馬場が名手。特に日本プロレス時代には多用していた。手足の長いレスラーが使うと効果的で、坂口征二、ジャンボ鶴田も得意とした。ストロング小林も痛め技として多用していた。

 外国人ではメキシカンは多くのレスラーが使用。彼らの場合は相手をひざまずかせ足をクロスさせできめるなどアレンジして使うことも多かった。ロメロ・スペシャルも「変型サーフボード」と紹介されることもあった。

 ジャイアント馬場がサーフボード・ストレッチを得意にしたように、アンドレ・ザ・ジャイアントもサーフボード・ストレッチを多用。背中に頭突きを振り落とすというアレンジを加えて使っていた。