長州力のサソリ固め
2002.11.1 upload
2024.11.1 remix
デビュー戦でのサソリ固め |
ブレイク前のサソリは腰が高い(S52年) | 維新軍団を結成したころ。技に風格が出た |
デビュー戦のサソリ固めの連続写真 |
長州力の必殺技サソリ固めは、日本でその洗礼を浴びたブレッド・ハートがシャープシューターなる名前でフィニッシュホールドとして使うなどしたこともあってか、いまや世界的にポピュラーな技になっている。 長州が初めてこの技を使ったのはなんとデビュー戦であった。ゴッチ直伝の必殺技という触れ込みで、ゴング誌ではレッグロール・スピン(回転逆エビ固め)として紹介されている。上段左端の画像がその時の写真だが、まだこの頃は技を自分のものとしていないという感じがする。この技はゴッチによれば欧州では「スコーピオン」と呼ばれている技をアレンジしたものだという。技をかけたれた相手の体勢がサソリに似ているためにそのように呼ばれたのであろう。 長州はデビュー戦の後すぐにゴッチ道場を経由してカナダで修行を積んだ。そして52年に第4回ワールドリーグ戦に凱旋帰国するわけだが、帰国第一戦のフィニッシュにはサソリ固めではなく、羽折り固めを使っている。長州(当時はまだ吉田)は羽折り固めでアピールしようと思っていたのだろうが、これが不評でシリーズ中はサソリ固めをフィニッシュに多用するようになる。しかし当時のサソリ固めは相変わらず腰が高く、絶対的な必殺技でなく「得意技」の領域を出なかった。53年に藤波が凱旋帰国すると長州は徐々に精彩を欠くようになり、サソリ固めを出す前に負けてしまうことが非常に多かったし、北米タッグの防衛戦でもなぜかサソリをフィニッシュにすることはなかった。筆者がはじめてサソリ固めで相手をギブアップさせたのを見たのは、54年12月のメキシコ遠征でカネックのUWA世界選手権に挑戦した3本勝負で1本取ったときがはじめてだったぐらいだから、長州=サソリ固めというイメージは希薄になりつつあった。今回の特集に際し、ブレイク前の長州の画像を探したが手持ちの資料の中には完全に決まっているベストショットは皆無であった。 しかし57年に単独メキシコ遠征から凱旋し維新軍(当時は狼軍団と呼ばれた)を結成してブレイクした後の長州はサソリ固めを多用するようになる。猪木、藤波との戦いの中で長州が成長するのに比例してサソリ固めにも風格が増し得意技から必殺技へと成長していった。使うレスラーの成長によって技も成長してゆくという好例である。 最後に藤波が長州との一連の抗争で「掟破りの逆サソリ!」と称されたサソリ固めを多用したが、これには筆者は批判的だ。猪木がハンセンに逆ラリアートを見舞ったが、猪木がラリアートを使ったのはこの一試合のみ。だからこそインパクトがあるのである。藤波もここ一番でこの技を使ったのであれば思い出の名シーンとなるが、その後も断続的に使ったのはいただけない。これでは「掟破りの逆サソリ」ではなく、「掟破りの技パクリ」だ。この逆サソリは長州のリキラリアートと同じく、特定のレスラー必殺技を誰もが使うという嘆かわしい事態の先鞭だと思う。ある意味。昭和プロレス崩壊の一因だと筆者はおもっている。 |
アル・コステロの豪州式サソリ固め |
ターザン・ジャコブスもサソリもどきの技を・・・ |
なんと猪木もサソリ固め風の技を使用! | クツワダが披露したこの技は完全にサソリ固め | テリーのテキサス四葉固めも類似技だ |
さて、ゴッチがサソリ固めを「この技は欧州でスコーピオンと呼ばれている技をアレンジしたもの」といったというが、そのスコーピオンと思しき技を使っていたレスラーがいた。ザ・カンガルーズのアル・コステロである。彼の技はまんま後に木村健吾がトライアングル・スコーピオンを称して使っていた技である。コステロはこの技を「カンガルーズ・コアラ・クラッチ」というオーストラリア情緒たっぷりの名前で呼んでいたそうだ。 また、昭和48年に新日本プロレスに来日したターザン・ジャコブスも入り方はサソリ固めに近い技を披露したが、技が決まった状態はリバース・インディアン・デスロックとほとんど代わらないものであった。 そして驚くべきは昭和48年「新春バッファロー・シリーズ」で猪木がトニー・チャールズにサソリ固めもどきを使っていたのだ! 実は今回のサソリ固め特集はこの画像を紹介したかったから企画したのであった。自分の脚を相手の股間に入れていないこと以外はほとんどサソリ固めと同じ、さらに言えば次に紹介するテキサス・クローバー・ホールドで相手の股間に差し込んでいる腕(へんな表現ですが・・・)を抜いたものである。猪木もおそらくこの技をゴッチ教室で学んだのであろう。しかし、まぁ、これは本当に驚いた! さて、このサソリ固めに類似した技に引退宣言した当時のテリー・ファンクが多用したテキサス・クローバー・ホールドがある。これは相手の脚の間に自分の足を入れるのではなく腕を入れて固定していた。これにより相手をより急角度に弓なりにそらすことができる。しかしその反面、技に入るまでの工程がサソリ固めに比べて実践的ではなかったように思う。この技は現在は後継者はいない。 |