トニー・ロコのサーフライダー・スペシャル(ロメロ・スペシャル)

2002.4.6 upload
2024.11.20 remix

 

 

ダブル・レッグ・ロックにとらえ両腕をつかんで後方に倒れながら相手を吊上げる

  見事に決まったサーフライダー・スペシャル!

 

 メキシコには見た目に複雑な関節技の複合技が非常に多い。その中でも有名なのがリト・ロメロ(昭和時代にはラウル・ロメロが考案したと言われていたがこれは間違いだったようである)が考案したロメロ・スペシャル(吊り天井固め)である。メキシコではタパティアと呼ばれた。

 プロレス名鑑や雑誌などで決まった形は知っていたが、どのようにこういう吊り天井の形にもっていくのか、という疑問が常にあった。その疑問を晴らしてくれたのが、トニー・ロコであった。ロコは1960年代後半にロスに登場しアメリカス・タッグを獲得しその後は全米を転々としたレスラーで、決して一流とはいえなかったが、そのガッツあるファイトぶりは眼を引くものがあった。

 そのロコが使うロメロ・スペシャルは「サーフライダー・スペシャル」と呼ばれた。恐らく相手を持ち上げるまでの格好がサーフィンで波に乗っている姿に似ているため、ロスのファンがそう名づけたのであろう。ロコはこの技を多用したが、残念ながら相手をギブアップさせた記憶はない。しかし試合を盛り上げるには効果的な技であった。というのもこの技は非常に難易度が高く、相当なバランス感覚の持ち主でないと使いこなせないというのをファンは知っていたからだ。それを高い成功率で使っていたトニー・ロコは知名度は低いが名選手であったといえるだろう。

 

日本では昭和31年に来日したラウル・ロメロが初公開

 

ジルベール・ボワニーのロメロ・スペシャルは足を極めていない   スティーブ・ライトのロメロ・スペシャル。きっちり足を極めている

 

   
メキシコの帝王カネックも使いこなした   アニバルのロメロ・スペシャル。腕を固定していない   アメリカでは持ち上げずにギブアップを奪う技もあった

 

意外な使い手はグレート草津。成功率は低かったそうだ


 この技の元祖はメキシコのリト・ロメロだと言われている。日本で最初に公開したのは、ラウル・ロメロであった。昭和31年に木村政彦の国際プロレス団の招きでメキシコ・ジュニアヘビー級王者(メキシコにジュニア・ヘビー級という階級はなかったが・・・)として来日し、公開練習で早くもロメロ・スペシャルを公開している。以後、メキシコ系のレスラーが日本で披露している。

 ロメロのほかにもメキシカンの使い手は非常に多かったが、イギリスのスチーブ・ライトがタイガーマスクにロメロ・スペシャルを決めていた。これは彼がメキシコに遠征した際に体得したものであろうか? ヨーロッパ系ではジルベルト・ボワニーも使っていたので、メキシコからヨーロッパに遠征したレスラーが広めたのかもしれない。

 またサーダラ・シン、バーン・ガニアやワフー・マクダニエルらがロメロスペシャルと同じく足をダブルレッグロックに組めて腕を取る技が使っていた。ただし彼らの場合は吊り天井のように持ち上げることはなく、腕を引っ張り相手をゆすって痛めつけるというスタイルでインディアン・バックブリーカーと呼ばれた。

 日本人ではグレート草津が昭和40年代によく使っていたが、流智美氏の著書によると「2回に1回は失敗していた」という。