ジャイアント馬場の河津落とし

2024.11.25 upload

 

     
相手の左足をフックしそのまま後ろに倒れ込む*   世界オープン選手権では鶴田をフォールした   ジャック・ブリスコとのNWA世界戦でも炸裂! 

 

       
初披露した試合の連続写真  

この時は相手皮見て右側から技をかけている

  フックした足を跳ね上げ後ろに倒れ込む   最後まで足のフックを離さないのがポイント 

  

 プロレス技のなかには、どこに効き目があるかよくわからない技がある。プロレスごっこをしていてもかけた方もダメージをおってしまう難解な技。その代表的なものが「河津落とし」(別名:河津掛け)である。

 この技はジャイアント馬場がプロレス技として完成させ、初披露は昭和48年7月13日のドリー・ファンク・ジュニア戦であった。この時は相手の右側からかけているが、その後は左側からかけるようになっている。

 相撲では豊昇龍が2022年に幕内では10年ぶりの「河津掛け」を決めて話題となった。相撲の場合は、自分は立ったまま相手の脚をはねあげて相手を背中から土俵に倒す技である。

 この技はどこに効き目があるかよくわからないと書いたが、柔道界では河津掛けは、後頭部を強く打つ可能性や脚部の関節を痛める可能性があるため、危険性のある技とされ、国際柔道連盟によって禁止技となっているそうである。後頭部だけでなく、相手の脚の関節にもダメージを与えることができる…という恐ろしい技だったのである。柔道の場合は技をかける方も勢いよく畳に倒れ込むあたりは、ジャイアント馬場の河津落としと同じである。

講道館のYoutubeチャンネル「河津掛」 https://www.youtube.com/watch?v=w6G57bWACi0


  この技は力道山がルー・テーズのバックドロップを相撲の「河津掛け」の要領で足をかけて防いだのにヒントを得て、ジャイアント馬場が相手の後頭部をマットに叩きつける必殺技に改良し完成させたというのが定説である。しかし力道山とテーズの試合は昭和33年、馬場が初披露したのは昭和48年なので、その間15年もの間隔があいている。馬場は15年間も構想に時間をかけていたのか? もしくは15年後に力道山×テーズ戦を急に思い出して「河津落とし」を開発したのであろうか…。

 これは推測だが、この年の9月26日に全日本プロレスと日本テレビが柔道王アントン・ヘーシンクの全日本プロレス入りを発表している。両社は前年の秋からヘーシンクのプロレス入りを画策して、交渉を始めていたという。その際に、馬場がヘーシンクの試合フィルムなども視聴し、柔道流の河津掛けを見て、プロレス技にアレンジしたのではないだろうか…。

 

 

第一犠牲者になったドリーは早速「河津落とし」を盗んだ  

ケン・マンテルは「サイドスープレックス」とこの技を呼んで使用

 

 

柔道出身の坂口征二もここ一番で使った

  ラッシャー木村はサンボから体得?ここからグラウンド卍固めに移行

 

 この技は外国人レスラーにも使い手が多い。最初の犠牲者となったドリー・ファンク・ジュニアが早速盗んで使用している。

 またNWA世界ジュニア・ヘビー級王者のケン・マンテルは、この技を「サイドスープレックス」と称して得意技とし、来日時には、タイトルマッチでジャンボ鶴田をフォールした。マンテルの河津落としは大きくジャンプするのが特徴であった。

 日本では柔道出身の坂口征二が得意とした。また、この技はサンボでも使われており、ビクトル古賀氏から直々にサンボのコーチを受けたラッシャー木村も使った。木村は河津落としからグラウンド卍固めに移行するという連続技も国際プロレス末期に披露した。

 アメリカではニキタ・コロフが得意とし、「ラシアン・スイープ」と呼ばれるようになった。