ホースト・ホフマンのセコ・バックブリーカー

2002.2.22 upload
2009.6.28 update
2024.11.23 update&remix

 

 
脚はダブルレッグロックに決めている   この吊上げの高さに注目!

 

 日本では「弓矢固め」と呼ばれる技を今回は紹介したい。

 この技は欧州系のレスラーがよく使い「セコ・バックブリーカー」とよばれた。この名称は昭和41年にこの技を日本プロレスのリングで公開したボブ・ボイヤーに技の名称を聞いたところ「シクル・バックブリーカー」と答えたのを、記者が「セコ・バックブリーカー」と聞き間違えたものといわれている。「シクル」は「鎌」の意味で、和訳すると「鎌型背骨折り」ということになる。相手のアゴと足首をつかみ、背中にあてがった足を支点にして相手の身体を鎌型に極めているためであろう。

 その後アントニオ猪木が使うようになり「ボー・アンド・アロー・バックブリーカー」(よく「ボー・アンド・ロー」と誤記される)という名称で定着した技である。 欧州のレスラーが使ったオリジナルの「セコ・バックブリーカーとドイツの帝王ホースト・ホフマンが使ったセコ・バックブリーカーはかけ方がちがう。ホフマンのセコ・バックブリーカーは相手の脚をインディアン・デスロックに固めている。このスタイルはホフマンのオリジナル(自らインタビューでそう答えている)であり、後で紹介するアントニオ猪木の「ボー・アンド・アロー」もホフマン流といえる。

 ではホフマン自身はこの技をなんと呼んでいたか? 昭和49年の2度目の来日時のインタビューをご覧いただこう。(「別冊ゴング」昭和49年8月号より引用)

編集部 「我々がセコ・バックブリーカーとかボーアンドアロー・バックブリーカーとか呼んでいる独特のバックブリーカーがありますが、あの背骨折の正式名称はなんと言うのですか?」

ホフマン 「特に決まった名前はないようです。私はバック・ストレッチなどと呼んでいますが・・・」

 「レスラーは技の名前には無頓着である」という通説通りの受け答えである。しかし「バック・ストレッチ」じゃぁピンときませんなぁ! 当研究室ではホフマンのこの技は「セコ・バックブリーカー」と呼ぶことにいたします。ではこの技を実際にごらんになったことのない方のために連続写真をご覧いただきましょう!

 

   

脚はインディアン・デスロックの状態

 

左手で顎をつかみ、両膝を背骨に押し当てる。

  そのまま仰向けに。

  

   

横からの連続写真。脚はインディアン・デスロックの状態

 

右手は相手の足首をつかみ、勢いよく後方へ

  そのまま仰向けになり、両足で相手の身体をつり上げる。

  

 ちなみにホフマンはこの技をフィニッシュではなく、痛め技として使っていたらしい。もったいない!

 では、ホフマン流ではない原型のセコ・バックブリーカーはどんなものであったか? これはなんとドン・レオ・ジョナサンがモルモン・シクルと称して、昭和33年の初来日時にフィニッシュとして使っていた。前述したように脚をインディアン・デスロックのように固めずそのまま片足で持ち上げるスタイル。前述のボブ・ボイヤー、スペインのジョー・アデールの吊上げない(失敗した?)スタイルのセコ・バックブリーカーも合わせてご覧ください。

 

   
これがジョナサンのモルモン・シクル。片足をつかんでいるだけ   フランス人のジルベルト・ボワニーのセコ・バックブリーカー 
   
スペインのアデールは持ち上げずに極めている。杉山が重すぎただけか?    ボブ・ボイヤーのセコ・バックブリーカー片足だけつかむタイプ

 

 それでは、相手の足をインディアン・デスロックに極めて持ち上げるタイプのセコ・バックブリーカー=ボー・アンド・アロー・バックブリーカーを日本で初めて公開したのは誰か? なんと昭和39年の「第6回ワールド大リーグ戦」に来日したインディアン・レスラーのチーフ・ホワイト・ウルフであった。ウルフは相手のアゴをロックしていないが…。

 ホフマンの「私が考案した」という証言が怪しくなるが…ウルフはヨーロッパで活躍していた事もあり、その時にホフマンがウルフの技を見て、セコ・バックブリーカーをアレンジしたとも考えられる。

 日本ではアントニオ猪木が一番の使い手。特に体の大きいレスラーを相手に披露しギブアップを奪っていた。坂口征二も使ったが、成功率が低かった。意外なところではアンドレ・ザ・ジャイアントが器用に使いこなしていた。

 猪木はインディアン・デスロックの状態から脚を相手の足にねじ込んだまま片足で相手を支えることがあったが、両足を背骨にあてがって吊上げてこそ効き目は倍増すると言うのが当研究所の見解である。この技も西村修あたりがたまに使う(2002年当時)だけで、幻の技になりつつある。見た目にも痛さが伝わりやすい技だけにこのまま絶滅してしまうのはもったいない。

 

       

ウルフのボー・アンド・アロー。アゴをロックしていない

  ラッドの巨体を吊り上げギブアップさせた猪木の弓矢固め   アンドレ・ザ・ジャイアントも使いこなした!