フリッツ・フォン・エリックのアイアン・クロー

2002.1.20 upload
2024.11.2 remix

 

 

観客に「さぁ、いくぞ!」とアピールするのも見所

 

かかるか?かからないか?の攻防がファンを沸かせる!

 

 

馬場の苦悶の表情が見えるように角度調節しているところに注目!

 

日プロ最後のインター戦で大木を大流血に追い込む


 日本には多くの外人レスラーがやってきたが、その中でも観客動員力が優れていた一人にフリッツ・フォン・エリックがいる。彼は多くの日本人の胸に焼きついた強豪であり、その訃報が一般紙に掲載された数少ないプロレスラーでもあった。その彼の必殺技が「アイアン・クロー=鉄の爪」である。

 この技の誕生には諸説あるが、彼が強盗事件に遭遇した時に犯人をつかみ倒したのがきっかけというのがエピソードとしては一番面白い。とにかく額をつかむという単純な技をフィニッシュに使ったのは、恐らくエリックが最初であろう。一度つかんだら離れないという恐怖の技。

 最も多く被害にあった日本人は馬場で、その対策として馬場はなんとエリックの右腕に噛み付くという、予想外のディフェンスを取ったのであった。ほかにつかみに言ったところをよけられ、マットに手をたたきつけて自爆するという展開も懐かしい。エリックは脳天だけでなく、ストマック・クローもフィニッシュに多用していた。彼の息子たちもクローを多用したが、あの父親が見せた威光は彼らのクロー攻撃からは見られなかった。

 

     
ラシクはなんといっても表情がよい  

クラップの表情もこれまた素晴らしい!

   ラシクとクラップの二段クロー攻撃!

 

さて、エリックのほかに、脳天へのクローをフィニッシュに使ったレスラーとしては、バロン・フォン・ラシク、キラー・カール・クラップが双璧であろう。ラシクはこれを単純にブレーン・クロー=脳天つかみと称した。ただ、ラシクの場合クローをフィニッシュにしていたものの、エリックのようにこの技一本で勝負するということではなく、多彩なテクニックで追い込み、相手がへたばったところにお見舞いするというパターンであった。

もう一人、ブロンズ・クローのクラップはラシクと違い、クローをとったら何も残らないようなレスラーであった。本国アメリカでもエリックとのクロー合戦で売り出したり、外人不足に悩む新日本プロレスが、タイガー・ジェット・シンを発掘るまでエースにすえていたものの、やはりレスラーとしては2流であった。昭和53年にはマンネリ解消のためか、親指の位置を目玉のあたりにずらしたアイ・クローを使用したが、これは明らかにサミング攻撃、良識あるファンの失笑を買った。

ラシクとクラップがコンビを結成して参加した昭和56年の「世界最強タッグ決定リーグ戦」でみせたクローの二段攻撃は見応えがあった。

革手袋=ブラックジャックをはめたブラックジャック・ランザ、ブラックジャック・マリガンもブレーンクローをフィニッシュに用いていたが、日本でのインパクトは前出のドイツ系三人衆に比べると弱かった。

クローをフィニッシュにしていたといえばタイガー・ジェット・シンのコブラ・クロー。これもチョーク攻撃としか思えないが、シンに悪党としてのイメージを植え付けるためには、ぴったりの見ていてイライラする陰惨な技であった。後継者はほとんどいない。また、何度もコブラクローの被害にあった坂口征二もアメリカ修行時代にショルダークローを多用していた。これは坂口に限ったことでなく、日系レスラーといえば、ショルダークローであった。

このようにクローと言うのは、前回紹介したスリーパー・ホールドのように陰惨な悪役の専売特許であり、エリックの息子たちのようなベビーフェイスがフィニッシュに使っても、もうひとつぴんとこない。このクロー攻撃というのも平成のリングからはまったく姿を消してしまっている。クロー一発で相手のこめかみから流血させられる大悪党は出ないものか?

 

         
マリガンもブレーンクローを得意とした   どう考えてもチョークのような…   ビッグ・サカ時代のショルダークロー    高千穂もショルダークローを得意とした