マッドドッグ・バションのコブラ・クラッチ

2002.12.19 upload
2024.11.20 remix

 

井上を失神させたバションのコブラ・クラッチ。当時は「変型スリーパーホールド」と呼ばれた。

 

 マッドドッグ・バションといえばめっぽう喧嘩に強く、喧嘩になった場合は相手の目玉をくりぬいてしまうというエピソードが伝説にもなっている暴れん坊であるが、そのバションがフィニッシュとして多用したのがこのコブラ・クラッチであった。

 彼が日本で使ったコブラクラッチの中でも最も印象的なのが昭和50年にマイティ井上からIWA世界ヘビー級王座を奪取した試合の1本目に井上を失神させたシーンである。国際プロレスの定番ともいうべき大流血戦になり、井上を得意のパンチ攻撃で追い込んだバションは1本目で早くもパイルドライバーと並ぶ必殺技であるコブラクラッチを爆発させたのである。1本目に必殺技を出したことで、1本を井上が取リかえすだろう・・・と、当時のファンは思ったに違いない。しかし2本目は両者リングアウト。IWAルールでは反則以外ならタイトルは移動、しかも両者リングアウトでも1本づつ取る勘定になっていたため、スコアはバションから見て2−1となり王座が移動してしまった。当時の雑誌を見ると「1本目のコブラクラッチのダメージが尾を引いた」と解説がついている。

 やはり3本勝負というのは面白い。この井上VSバションのように1本目に得意技を出して相手に決定的なダメージを与えておいて2本目を楽にしようという作戦もあるわけだ。ただ全力で相手を叩き潰さなくともタイトルは手中に出来るのである。このような作戦の妙も3本勝負の面白さであった。「狂犬」と言われたバションが見事な頭脳作戦を使ったのがなおさらのこと面白いではないか。

 

 

   
モンゴリアン・ストンパーのコブラクラッチ   新日本登場以前のシンの宣伝写真  

坂口のコブラクラッチはバション・タイプ!

 

 さてこのコブラクラッチだが、当時は「変形裸締め」と呼ばれた。右手で相手の左腕を掴んでクビに巻き、左腕を相手の左腕の隙間から差し込んで、頚動脈を閉めるという技である。首の側面を締めるため、スリーパーホールドのようにチョークを取られることも少ないだろう。

 写真を見ると判るようにマッドドッグ・バションや坂口征二のように自分の腕を組んで相手の右頚部を締めるスタイルと、モンゴリアン・ストンパーやタイガー・ジェット・シンのように相手の後頭部を押さえるようにして左側頚部と、右側頚部を同時に閉めるスタイルがあったようだ。素人考えではストンパーやシンのスタイルのほうが効き目が倍増しそうな感じがするが、実際はどうだったのだろうか?

 この技はサージェント・スローターもフィニッシュに使い、チキンウイング・フェース・ロックが得意なボブ・バックランドとコブラクラッチVSチキンウイング・フェース・ロック対決を行い話題を呼んだ。テッド・デビアスがミリオンダラーマンに変身してから「ミリオンダラー・ドリーム」と名付けて使用した。