ローラン・ボックのダブルアーム・スープレックス

2002.8.31 update

 

   
         

ボックの急角度にたたきつけるダブルアームスープレックスは衝撃的であった。(写真撮影 HARU一番氏)

 

 ダブルアーム・スープレックスは既にビル・ロビンソンを主人公にして「昭和必殺技名鑑」に登場済だが、やはりボックのダブルアーム・スープレックスは別項にて取り上げねばならぬほど、昭和のプロレス・ファンには思い出深いものであったようだ。今回「ローラン・ボックのダブルアーム・スープレックス」として、再びこの技を取り上げるきっかけとなったのは、当HPのビジターであるHARU一番さんに素晴らしい連続写真を頂いたからである。これはぜひ皆さんに紹介したいという思いを禁じえなかったのである。写真の被害者はタイガー戸口である。あの戸口の巨体をいとも簡単にたたきつけたボックというレスラーの「恐ろしさ」がこの3枚の写真から伺えると思うのだがいかがだろうか?しかもこのときボックの体調は万全ではなかったというのだからさらに恐ろしい。

 ボックのダブルアーム・スープレックスはよくワン、ツーのタイミングで投げる、もしくは引っこ抜くと表現される。ロビンソンのダブルアーム・スープレックスの連続写真を見比べていただければ分かると思うが、ボックは「高く持ち上げる」というプロセスを省き、いきなりたたきつける動作に入っている。上の写真を見ても分かるように、ボックは最後までグリップをとくことはなく戸口は後頭部からたたきつけられている。これでは受身も何もない。ロビンソン(特に後期)やジャンボ鶴田のように大きく弧を描いてから投げ捨てる方式であれば受身を上手く取ればショックはやわらげられるだろうが、ボックの投げ方は、投げられるレスラーの運命はボックにゆだねられているといっても過言ではない危険な投げ方である。「その技が出れば試合は終わる」という必殺技の定義が当てはまる最後の必殺技がこのボックのダブルアーム・スープレックスだったといえよう。

 猪木の欧州遠征をプロモートし猪木を倒して名をあげるというプロデュースをやってのけたボックはまさに欧州版猪木と言っても良かろう。レスラーとしての実力も申し分はなかったが、「天はニ物を与えず」プロモーターとしてのボックの評価は最悪、レスラーへのギャラをカットし副業につぎ込み、挙句に脱税で逮捕されレスラー人生を終えてしまう。逮捕こそされなかったが、この辺の感覚も猪木にどこか似ている。来日した頃のボックも衝撃的だったが、やはり猪木が欧州に遠征した当時の全盛期のボックを日本で見てみたかったと思うのは私だけではあるまい。