ボブ・バックランドのハイアングル・アトミック・ドロップ

20023.9 update

 

 
     
助走をつけて叩きつけるのがボブの特徴   ややジャンプして落とすこともあった

 

 昭和プロレスでポピュラーだった技のひとつにアトミック・ドロップがある。相手の脇に頭を入れて股間に腕を入れて高く持ち上げて、相手の尾てい骨を自分のひざに落とすという単純な技である。これにどんな味付けをするかはレスラーの力量。中でも筆者の印象に残っているのがニューヨークの超新星と呼ばれたボブ・バックランドである。彼はゴッチ仕込みのテクニシャンであると同時に豪快なパワーファイターでもあった。WWWF選手権をスーパースター・ビリー・グラハムから奪取した試合のフィニッシュがこの技であった。ボブはグラハムを持ち上げると、その場で足踏みを踏んで2,3歩助走をつけてから豪快にひざの上に尾てい骨を落とすという豪快なアトミックドロップを疲労した。日本では足踏みはしなかったが助走してのアトミックドロップは公開してくれた。蔵前での猪木戦では猪木からもこの技でフォールを奪っている。ボブの場合この技だけでなく、ジャンピング・パイルドライバー、ジャーマンスープレックス・ホールドという技もフィニッシュに併用していたため、この技の使い手としての印象は薄いかも知れぬが、筆者には強烈な印象として残っている。

 日本人でこの技をフィニッシュに多用し始めたのはジャイアント馬場である。しかし、馬場の場合は相手の脇に頭を入れずに、後ろから出来つくように持ち上げてひざに落としていた。これと同じスタイルを使っていたのがジョージ・ゴーディエンコ。初来日でのロビンソンとの試合でのショットをご覧いただくが、あまりのパワフルさに驚かれると思う。

 驚きついでに坂口が48年に公開したスーパーハイアングル式。これは相手を肩に担いで持ち上げるという荒業。この時期坂口は猪木の追放により馬場に次ぐ2番手に昇格したため大いにハッスルしていた。その気合充実振りが現れた大技である。しかしあまりにも危険すぎたのか、この後はほとんど公開していないようだ。

 

 

   
         
決してハイアングルではないが、珍しいので馬場の抱え式の連続写真を紹介しておく。

 

       
                 
ゴーディエンこも馬場と同じ抱え式。  

坂口のスーパーハイアングル式。

  ストロング小林  

テリーも得意としていた。

 

意外な使い手はマスカラス。

 

 

 ボブと同じように助走をつけていたレスラーはほかにもいる。そうストロング小林である。しかし彼の場合はなぜか対角線にコーナーポスト付近まで走りこんでしまうため、叩きつけた時点でダウンした相手の足がロープの外に出ているということが多く、助走が裏目に出ていた。

 意外な使い手としてはテリー・ファンク、ミル・マスカラスをあげておこう。テリーは総じて技が下手であったが、このハイアングル・アトミック・ドロップはきれいなフォームで使っていた。今回は馬場の巨体を見事に持ち上げている画像を公開しておく。一方のマスカラスもロスで行われた伝説のNWA世界ライトヘビー級選手権で王者のエル・ソリタリオからこの技でフォールを奪っている。当時の雑誌ではメキシカン・アトミック・ドロップと命名されていたが、グラビア写真を見る限りただのアトミック・ドロップである。

 昭和の時代には小学生までもがプロレスごっこで繰り出したこの技もほとんど絶滅状態。もし安田がプロレスをやるのならボブがやった足踏みつきの助走式を復活させてもらいたい。しかしくれぐれも走りすぎには注意してほしい。