このアルバムはヤードバーズのイギリスにおけるデビュー盤である。デビュー・アルバムにライブ盤を選ぶと言うあたりが、ヤードバーズと言うグループの方向性を象徴しているように思うのであるが、エリック・クラプトンの脱退後、時代の流れもありヤードバーズもスタジオ録音の魅力にいかれたのか?セカンド・アルバムではスタジオにこもってしまうのであった。このライブは64年3月にロンドンのマーキークラブで行われたものであるといわれ、それが正しければ、EMIとレコーディング契約を結んだ直後に録音されたものである。ヒット曲が全くないグループのライブを何故録音したかは謎であるが、結果的に彼らの一番勢いのある時期のライブを耳に出来るのだから誠にありがたいことである。ちなみにこのアルバムがリリースされた65年1月は既にクラプトンは脱退しており、ジェフ・ベックが加入しているハズ。
このアルバムもジョージー・フェイムのライブ盤と同じくすべてR&B、R&Rのカバー。どちらかと言えばA面は後の良い曲を集め、B面にはややディープなR&Bを集めている。このアルバムで白眉ものは1曲目の「モンキー・ビジネス」であろう。この時点でもクラプトンのギターは秀逸であり同時期のビート・グループのギター・ソロとは全く異なる事が分かると思う。クラプトンのギターと同じく「アイ・ゴット・ラヴ・イフ・ユー・ウォント・イット」でのキース・レルフのハープも良い。この人はとやかく批判(ボーカルの面で)が多いが、彼がいなければヤードバーズは成り立たなかったであろうし、3大ギタリストがいた!などと言うのは完全な後付けの宣伝文句であり、当時のファンはギタープレイなどよりも、キースの愛くるしい(?)雰囲気に飛びついたことはまちがいないと思う。しかしこのタイプのキャラクターは日本では全く駄目でヤードバーズも日本では「フォー・ユア・ラブ」以外はほとんど駄目だった。しかしそんな中でこのアルバムをリリースした東芝音工は偉いよ、うん。今ではビクターがCDを発売しているので手軽にいい音で聞けるが、10年ほど前はチャーリー盤の粗悪な疑似ステレオ盤を聞くしかなかったのである。今のビート・グループファンは本当に恵まれていると思うなぁ。実はこのアルバムにはクレジットされていない曲が入っている。「レスぺクタブル」とメドレーで演奏されている「ハンプティ・ダムプティ」がそれなのであるが、この曲はジョージー・フェイムのライブ盤にも収録されている。しかしながらこの曲、実は童謡で、なぜ2組のR&Bを指標とするグループが奇しくもライブ盤でカバーしているのか?・・・これは長年の筆者の中でのミステリーである。まぁ、そんなことは置いといて、間違いなくこのアルバムは20世紀最高のライブアルバムのうちの一枚に数えられるべき名盤である。現在は数種類のフォーマットでCD化されているので、手軽に聴けるようになったのも嬉しい限りである。
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