約4ヶ月ぶりのレビューです。最近、各国でビートグループの復刻が進んでいるようですが、そのほとんどが過去にも別のフォーマットでリリース済みのもののようだ。よって既に別のフォーマットで持っている私などは、新譜がデジタル・リミックスなどされていようものなら、腹立たしい気分になるわけです。実はウェイン・フォンタナとマインドベンダーズのアルバム2IN1がリイシュー専門の名門(?)レーベルBGOからリリースされたと聞き、腹立たしい思いをしておりました。というのもファーストアルバムはドイツのスタークラブレーベルの復刻版(アナログ)で、セカンドはこれまたドイツのリイシュー専門のRock-in-beat盤で持っていたためだ。しかし後者にはボーナストラックが17曲も入っているので納得はできるのだが・・・今回レビューするのはそのRock-in-beat盤のCDです。
Rock-in-beatなるレーベルは別項にもあるように、ほとんどハーフ・ブートといってよいレーベルのようだ。ドイツの著作権規制は非常に甘く、レコード起こしのCDをリリースしても文句が言えないようで、Rock-in-beatはなんとデイヴ・クラーク・ファイブのアメリカ盤全アルバムのリイシューをしてしまうという偉業を成し遂げてしまったのである。そのすべてがレコード盤から起したものと思われ、しかも最後にはレアトラック集もリリースするという恐ろしいレーベルであります。しかし他国では限りなく違法に近いこのレーベルもレコード盤でしか聞けない音源をリリースしてくれるということでは大歓迎すべきレーベルといえます。というか、版権を所有するオリジナルレーベルの対応の遅さのほうが問題ありと筆者は思うのであった。
前置きが長くなったが、このCDはウェイン・フォンタナとマインドベンダーズのセカンド・アルバム「It's Wayne Fontana and
the Mindbenders」にThe Game of Love,Um um um um um
umを除くシングルのA、B面、さらにマインドベンダーズのシングルを収録したお徳盤。しかも音質も非常に良い。たぶん盤起しだと思うのだがそうは聞こえないほどすばらしい音質で、とくに低音の厚みは当時のアナログ盤の音質を意識したかのようなリミックスになっております。さて、ウェイン・フォンタナとマインドベンダーズというグループですが、彼らはホリーズやハーマンズ・ハーミッツと同じくマンチェスターのバンドで65年の「ゲーム・オブ・ラヴ」がイギリス、アメリカで1位を獲得し一躍有名になった訳だ。レコード収録曲を見て分かるようにほとんどがR&Rのカバー。なんとオリジナル曲がほとんどないというグループだった。肝心の演奏は非常に垢抜けていて、それがかえって欠点となり残念ながらやや迫力不足の感が否めないといえる。むしろこのグループはR&Rのカバーではなく、ここにも収録されているShe
needs loveのような小粋なポップバラードでこそ本領を発揮するといえる。他にはゾンビーズのカバー I Want Her She Wants Me(この曲のみステレオ)が聞きもの。ラストのComming
Backも一風変わった曲で面白い。
グループのその後を説明すると66年にフォンタナが独立するわけだが、分裂後はマインドベンダーズが「恋はゴキゲン」のヒットを放ち映画「いつも心に太陽を」に出演する人気を獲得した一方で、リーダーだったフォンタナは「パメラ・パメラ」という名曲をヒットさせた以外はこれといった目立ったヒットを出せずに終わってしまう。ブライアン・プールとトレメローズと同じような運命をたどったバンドといえますです。
【コレクターズ・ノート】
なお、このアルバムは当時日本でも日本ビクターから「ウェイン・フォンタナとマインドベンダーズ」のタイトルで14曲仕様でリリースされていたが、そのジャケットはファースト・アルバム(日本でも同じ使用でリリースされていた)を流用したもの(下写真)で混乱を招く。ちなみに収録曲は以下のとおり。
A面 :遅すぎたプロポーズ、メンフィス・テネシー、ライク・アイ・ディッド、シーズ・ア・レベル、サム・アザー・ガイ、シャドウ・ノウズ、ジャガーとサンダーバード
B面 :シー・ニーズ・ラヴ、リメンバー・ラブ、スキニー・ミニー、ハニー・アンド・ワイン、フーチー・クーチー・マン、プリーズ・ステイ、ロングタイム・カミン
【2006年5月5日付記】
現在はイギリス盤のアルバムをカップリングしたCDがリリースされており、これにベスト盤を合わせれば、彼らの音源はほとんどそろう事になる。
【2010年1月12日付記】
2009年にユニバーサル・ミュージックからオフィシャルなりイシューCDがリリースされました。
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