タートルズはフォーク・ロック・ブームのなかで登場し、一連のボブ・ディランのカバーをヒットさせたグループである。しかし、ディランのフォーク・ナンバーをカバーすればヒットするという傾向は、66年いっぱいで小康状態を迎える。というのは、ディランの作品自体がロック色が強くなったためであろう。ま、マンフレッド・マンのように書き下ろしてもらっているのもあるが。とにかく、フォーク・ロックの寿命は非常に短かった。だからフォーク・ロック・グループなんて呼ばれた若者達は、フォーク・ロックからの脱却を計ったのである。その成功例が、タートルズのこのアルバムである。バーズがサイケ色を強めた一方で、タートルズはデビューからわずか2年で、非常に素晴らしいポップ・グループに変貌を遂げている。
タイトル・ナンバーの「ハッピー・トゥゲザー」の素晴らしさは多くのかたがご存知であろう。全米一位を獲得したこの曲は、もの憂げなメロディとは裏腹に、歌詞の内容は非常に希望に満ちたラヴ・ソングになっている。ブラスセクションを効果的に使い、得意のコーラスもさえまくっている。ジャケットなどをご覧になればわかるが、タートルズの面々のルックスはポップ・スターのイメージからは程遠い、かなり不細工な連中である。特にタンバリンを叩いている眼鏡の人はアニメ・オタクのようだ。脱線しました。しかしながら、長年にわたって人気を得たというのは、彼らの楽曲の良さと、その実力を物語っていると思う。こんな褒め方はおかしいが。
このアルバムは明るく、そして暖かい。1曲目の「メイキン・マイ・マインド・アップ」でのブラスに絡むコーラスの素晴らしさは絶品。まさにカリフォルニアの明るい太陽を感じさせるカリフォルニア・サウンドと呼ぶにふさわしいものである。そしてこのアルバムには「ハッピー・トゥゲザー」の作者であるアラン・ゴードンとゲリー・ボナーのコンビによる曲が2曲(ミー・アバウト・ユー、いかしたあいつ)収められているが、やはりタートルズにぴったりの素晴らしい作品である。「いかしたあいつ〜She'd
rather be with
me」は、「ハッピー・トゥゲザー」とは異なりいかにもシングル向きのコマーシャルな曲だが、むしろ「ミー・アバウト・ユー」のほうに注目したい。この曲はアレンジもハワード・ケイランのヴォーカルも最高だ。このケイランという人は本当に優しい暖かい声をしている素晴らしいポップ・ヴォーカリストだと思うが、特に日本ではほとんど忘れ去られかかっているのは残念でならない。
で、筆者がこのアルバムで一番気に入っているのが「トゥー・ヤング・トゥー・ビー・ワン」という曲。たった2分の小曲であるが、これがフォーク・ロックの進化系なのだという素晴らしい作品。ヴォーカルとコーラスはもちろん、これはアルバム全体を通して言えることなんですが、アレンジが素晴らしいんですよねぇ。また「ライク・ザ・シーズンズ」でのアコースティック・ギターとストリングスのカラミは最高です。本当に素晴らしい。まぁ、最後の「花で飾った洋服〜Rugs
of wood and
flowers」という曲はおふざけということで。これはぼさぼさ頭に眼鏡の例のアル・ニコルがコミカルに歌っております。サージェント・ペパーズを意識したかのか、エンディングにはオーディエンスの歓声が。
とにかく「ペット・サウンズ」に何ら引けを取らない非常に素晴らしいアルバムです。このアルバムを聞くと本当に心が洗われるというか、落ち着いた暖かい気持ちになれます。これは一重に彼らの人柄が表れているんだろうなぁと思う。僕は心がすさみかけたらこのアルバムを聞くようにしています。これを機会に皆さんにもぜひ聞いて頂きたい、最上級のポップ・アルバムであります。(CDでサンデイズドから絶賛発売中!SUNDAZED
SC6037)
【コレクターズ・ノート】
キングがリリースした日本盤は曲順が入れ替わっており、スローン&バリによる「ノー・ユー・ベター〜Can I get know you
better」が追加収録されている。この曲と「ハッピー・トゥゲザー」は疑似ステレオでの収録。
第1面 : ハッピー・トゥゲザー、いかしたあいつ〜She'd rather
be with me、トゥー・ヤング・トゥー・ビー・ワン、パーソン・ウィズアウト・ケアー、ライク・ザ・シーズンズ、花で飾った洋服 〜 Rugs of wood
and flowers
第2面 :
ノー・ユー・ベター、メイキン・マイ・マインド・アップ、プレイ・ラヴ〜Guide for the married
man、シンク・アイル・ラン・アウェイ、ウォーキング・ソング、ミー・アバウト・ユー
|