60年代イギリスが生んだ最高の女性ボーカリストは、文句なくダスティ・スプリングフィールドである。バート・バカラック&ハル・デヴィッドのポップスからゴスペル・ソング、果ては「この胸のときめきを」のような曲まで難無く謳いこなした彼女の歌唱力、表現力はまさに素晴らしい。ビーハイブに物凄い付けまつげと言う井手達はまさに60年代の女の子を具現していたと言えるが、ちょっとおばさんぽいルックスで損をした気がするが、まぁそれは言いますまい。
ダスティは50年代の後半から兄二人とスプリングフィールズなるヴォーカル・コンビでデビューしておりキャリアは長い。そんな彼女が独立して64年にリリースしたのがソロ・デビュー・アルバムがこの
" A Girl Called Dusty
”である。今回紹介するのはオリジナルの14曲に6曲のおまけ付きのお得版CDである。クレジットでは’97年となっているが筆者がこのCDを手に入れたのは’99年の事であった。まぁ、内容的にはダスティのシングル・ヒットと当時の他人のヒット曲を収録したと言う当時の定番とも言える構成になっている訳だが、大抵の場合シングル・ヒット以外の曲はかなりクオリティが低いものが多かった訳だが、ダスティによる当時のヒット曲のカバーは時にオリジナルを完全に凌駕しているのだから感心せざるをえない。特にシュープリームスの「恋のきらきら星」は好い。アーサー・アレクサンダーの「涙の24時間」もかなり素晴らしいアレンジで彼女のスタイルに仕上げている。かと思えばバカラック=ディヴィッドの「タルサから24時間」といったバラードナンバーも絶品である。イギリスにはダスティのほかにもシラ・ブラック、トウィンクル、サンディ・ショウ、ルルといった女性シンガーがいたが、アメリカのヒット・チャートの上位に送り込んだ曲の数はダスティが圧倒的である。これは彼女が先にも述べたようにR&B、バラード・・・なんでも歌いこなせたからに他ならないのだ。
今回のCD化に当たってはアナログでは入手困難であったステレオ・マスターが使われていて、非常に丁寧なデジタル・リマスターも行われているため音質は最高。絶対にお勧めの一枚である。
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