ファイル41 アングルか?ガチンコか?マスカラス殺傷未遂事件!
2003.12.13
昭和プロレスファンなら、ミル・マスカラスをほとんどの方がご存知であろう。しかし見事な肉体美を誇るマスカラスの腹部にキズがあり、なぜそのような傷がついたかを知っている人は意外と少ないようだ。 |
インタビューで傷口を見せるマスカラス。 |
1977年(昭和52年)9月30日に事件は起こった。その日マスカラスは泥棒コンビの片割れであるエル・ゴリアスとオリンピック・オーデトリアムのリング戦っていた。格下のゴリアスを下しファンの喝采を浴びているところに、ゴリアスのパートナーであるブラック・ゴールドマンがナイフを手に乱入し、マスカラスのみぞおちからへそにかけて切りつけたのである。マスカラスは大量出血するものの命に別状はなかった。 ヒールがベビーフェイスとの因縁を深める為に、試合に乱入するということはアメリカだけではなく、日本でもよくある行動である。しかし、乱入した際にナイフで切りつけるというのは前代未聞。いくらリングの上でのこととはいえ、これは傷害罪に問われてもおかしくはない。そのような危険を冒してまで、なぜゴールドマンはマスカラスを切りつけたのか?これはアングルを超えた凶行としか思えない。ご存知のようにゴールドマンは日本でもクリス・マルコフとストリート・ファイトを繰り広げるという事件を起こしたことでも分かるように、血の気の多いことは周知の事実。同じメキシカンとして、スター扱いを受けるマスカラスへの嫉妬がそうさせたのか?それともファンにアピールするためのアングルだったのか? |
事件後インタビューでやりあう両者 | カベジェラ・コントラ・マスカラで決着戦。 |
普通のプロモーターなら、スター選手をナイフで切りつけられたならば、激怒し襲った犯人であるレスラーを解雇、もしくは出場停止にしてもおかしくないはず。しかしゴールドマンは堂々とテレビマッチに登場し、インタビューでマスカラスと舌戦を繰り広げており、10月7日に両者はカベジェラ・コントラ・マスカラで決着をつけている。この一連の流れをみると、完全なアングルという推理が浮上する。しかもWWA時代には「伏魔伝」と呼ばれたロス・マットだけに、このような過激なアングルも考えられなくはない。 しかし、である。プロレス界屈指のナルシストであるマスカラスが、一番目立つ部分にナイフで切りつけられることを了承するであろうか?ナイフで切りつけたのはゴールドマンの暴走としても、マスカラスはプロモーターやゴールドマンを告訴することも、ロスマットを去ることなく、リベンジマッチに挑んだのは、レスラーとしてのプライドか?もしくはマスカラスがこのような屈辱を受けざるをえない状況にあったのか?いろんな推理が成り立つプロレス界屈指のミステリーである。プロレスは奥が深い・・・。 |