昭和プロレス秘宝館
プロレス悪役シリーズ第1巻 「銀仮面の死神」
2004.10.1 update
久々の「昭和プロレス秘宝館」です。今回は幻のプロレス漫画「プロレス悪役シリーズ」の登場です。今回紹介するのはその第1巻「銀仮面の死神」。某オークションにて2000円でゲットしました。貸本落ちなので安価だったわけですが、状態も申し分のない備品でした。特に40代以上のプロレス・ファンには「トラウマ」にさえなっているという、幻の一品の内容とは・・・。 |
主人公のブロンコ・キッド | 必殺技人間分解! | オルテガの膝が外れた! | 力道山にKO負け |
「銀仮面の死神」 舞台はメキシコ、人気マタドールのブロンコは、エイブ少年をかばう為に闘牛に胸を突き刺されて死んでしまう。自分のせいでブロンコが死んだと悩むエイブ少年。そんなある日、ジェス・オルテガの試合後に棺を背負った闘牛が闖入。その棺からブロンコの生き返りを自称するブロンコ・キッドなる銀仮面のレスラーが現れた。オルテガはブロンコに襲い掛かるが、必殺技「人間分解」の餌食となり、膝の関節を外されてしまう。ブロンコ・キッドは暴れに暴れレスラーから恐れられる存在となった。そして、ロスで力道山と対戦。力道山を人間分解で追い詰めるが、力道山そのままジャンプして鉄柱にブロンコの背中を打ち付けて脱出し、空手でブロンコ・キッドをKOする。力道山はブロンコのマスクをはいだ、しかしその正体は闘牛士ブロンコではなかった!会場を後にしたエイブは新聞を見て驚く。メキシコにブロンコが登場していたというのだ。ロスに現れたブロンコはニセモノだったのか・・・。という話だが、このブロンコ・キッドはもちろん架空のレスラーである。 |
ダラ・シンが大悪役? | ビル・ミラーとハガティの友情 | ロッカと馬場の死闘 | これがブルーザー? |
第1巻には他に「恐怖の魔術師」(ダラ・シン)、「ナゾの怪覆面」(ミスターM)、「空中の悪魔」(アントニオ・ロッカ)、「黒い大グモ」(リプス・コンプ)のストーリーが収録されているが、ストーリーは奇想天外だ。 正統派として有名なダラ・シンは大悪党として描かれている。日本からインドに取材に行った記者の前で、初めて正統派ファイトを見せ(対戦相手はゼブラ・キッド)、「まことの悪役レスラーは正統派としても一流だ!」と記者は思い知るのであった・・・。 ミスターMのストーリーはギャラでもめてボスを負傷させ、ギャングに追われるオリジナル・ミスターMのハガティを助ける為、ミラーが偽ミスターMとなって、ハガティの命を救う。そして最後には二人で協力してギャング組織を壊滅させるという活劇。ミラーが全然似ていない。 アントニオ・ロッカのストーリーは、日本人柔道家を殺すシーンで始まり、コワルスキーにも勝つところまでは「プロレス悪役物語」と同じ。それに馬場との試合が付け加えられている。馬場はロッカにリングアウト負けを喫する。傷心の馬場は空港に向かう途中で「身体障害児の家」の前に差し掛かった時に、ロッカが足の不自由な子供を勇気付ける姿を見る。そして「負けてくいのない相手だった」とその場を去ってゆくのであった・・・。 リプス・コンプ(ビッグダディ・リプスコンプ)のストーリーは当時の黒人差別を描いたもの。リプス・コンプの父は、黒人であるがゆえに白人レスラーとの対戦を避けられ収入がなくなり「殴られ屋」としてリプス・コンプを養っていたが、白人レスラーにリンチされて死んでしまう(舞台はなぜかフランス)。成人したリプス・コンプはアメリカに渡り白人レスラーへの復讐に燃える。バディ・ロジャースとの試合ではタックルでロジャースを花道の奥まで吹っ飛ばしてKO。黒人差別主義者として描かれているディック・ザ・ブルーザーもKOして白人への復讐は果たし、感慨に咽ぶリプス・コンプの前にクレアなる子連れの黒人レスラーが現れ、やはり差別されて試合に出られないので、戦ってほしいと哀願される。自分の子供時代を思い出したリプス・コンプは対戦を快諾。激しいタックル合戦の末、場外に転落したリプス・コンプは立ち上がることなく泣きながら20カウントを聞いた。クレア戦以後、リプス・コンプは再び無敗を誇るが、クレアに負けた理由はリプス・コンプ以外にはしらないのだ・・・。 と、ほとんどが創作ストーリーのようだ。しかし、当時は情報も少なく、それぞれのストーリーを「実話」として受け取った少年ファンは多いと聞く。プロレスがファンタジーを共生できたよき時代であった。全5巻が出版されたようだが、一日も早い復刊を願う。 2006年9月追記 プロレス悪役シリーズ全話復刊されました! |